告訴・告発とは

告訴とは

告訴とは、犯罪被害を被った被害者等の告訴権者が、捜査機関(通常なら警察署)に対し、犯罪事実を申告して犯人(被告訴人)の処罰を求める意思表示をすることです。

告訴は、口頭でもできる定めですが、通常は、告訴状を提出して行います。警察署は、告訴状を受理した後は必ず捜査を開始し、処罰へとすすめなければならないことになっています。

しかしながら、受理してもらうことは意外とハードルが高く、告訴状に不備があったり記載事項が不足しているなどの理由で受理してもらえないことがあります。

告発とは

告発は告訴とほぼ同様です。告発は、被害者以外の第三者が犯罪事実を知って、捜査や加害者(被告発人)の処罰を求める意思表示です。よって、告発は誰でもすることができます。

当記事では便宜上、または読みやすいように告訴・告訴状とだけ記載していますが、告発・告発状も含むを解釈していただくようお願いします。

被害届とは

最も一般的なものは「被害届」だと思われます。被害を被った被害者が警察署へ届け出るのは告発と同じですが、こちらは「犯罪があったことを警察に報告」するものだとお考え下さい。

警察署へ行って話を聞いてもらうだけでは被害届を出したことにはなりませんが、被害届を出したとしても、捜査するかどうかは警察の判断に委ねられますので、直ちに捜査をしてもらえるということにはなりません

刑事告訴の方法・手順

  1. 資料や記録を揃える
    被告訴人の情報、告訴の趣旨、事件詳細、証拠などは必須です。これらは告訴状を作成する上でも欠かせないものです。もちろん、被告訴人が見知らぬ者でも告訴は可能です。
  2. 告訴状の作成
    告訴状は刑法の知識も必要で、独特な文章なので、一般の方はとても困難だと思われます。警察署に対する告訴状の作成を業務とする士業は、弁護士・行政書士です。弁護士は警察署との相談・交渉、被告訴人と示談になった場合の相手方との交渉、民事訴訟もする場合の訴訟代理人など、すべてを委任できます。
  3. 告訴状の提出
    告訴状が完成したら警察署へ提出します。提出先は優先度順に、①犯罪が起きた場所、②被害者の居住地、③加害者の居住地を管轄する警察署です。(交番ではありません)

親告罪とは

親告罪とは、検察官が起訴するときに、被害者の告訴があることを必要とする種類の犯罪のことです。よって、捜査を行うためには被害者からの刑事告訴が必要とされます。

親告罪は「犯人を知った日から6か月を経過したときには、これをすることができない」と定められています。また、親告罪には「絶対的親告罪」と「相対的親告罪」の2つがあります。

  1. 絶対的親告罪
    告訴があることが公訴を提起するための条件となっている親告罪です
  2. 相対的親告罪
    通常は親告罪とされていないものが、犯人と被害者の間に一定の身分関係がある場合にのみ、親告罪とされる犯罪のことです

相対的親告罪で、配偶者、直系血族又は同居の親族との間で一定の財産犯を犯した者については、その刑を免除するという規定があります(親族相盗例)。そして、「配偶者・直系血族・同居の親族」以外の親族との間で同様の犯罪を犯した場合は、告訴がなければ起訴できないとされています。

刑罰の種類

前科は、有罪判決を受けた経歴をいいます。拘禁刑、罰金刑を受けると前科が付きます。これらは、実刑か執行猶予付きの判決かに関わらず前科が付きます。刑罰の種類は以下のとおりです。

  • 死刑…一定の法定刑のみ。もっとも重い刑罰
  • 拘禁刑…有期と無期があります
  • 罰金刑…1万円以上の刑罰
  • 拘留…1日以上30日未満の刑罰
  • 科料…1,000円以上1万円未満の刑罰。過料とは異なる
  • 没収…財産刑ですが、単独では科せません

背任罪(刑247)【相対的親告罪】とは

背任罪は、ドラマや映画のテーマになることもあって、多額の被害の場合に該当するものだと思われがちですが、金額の多い少ないは関係なく、以下の場合に成立するものです。ちなみに、株式会社の代表者である場合は、会社法上の特別背任罪が成立します。

背任罪は、他人のために事務を処理する者が、「自己または第三者の利益を図る目的」あるいは「本人に害を加えることが目的」で、任務違背の行為をして、結果として本人に財産上の損害を加えることにより成立します。

「他人のために事務を処理する者」とは、他人との委任・信任関係に基づいて一定の注意をもって、その他人の事務を処理する法的な任務(事実行為を含む)を有する者をいいます。

また、事務を処理するに至った原因は、法令・慣習・身分など、いずれもが根拠となり、さらには、義務がなくても他人のために事務管理する場合も含まれます。

背任罪における目的は、自己の利益を図る目的、第三者の利益を図る目的、本人に損害を与える目的のうち少なくとも1つあることが要件となります。「利益」及び「損害」については、財産上のものに限らず、身分上・精神上その他の社会生活上の利益・損害すべてを含むと解されています。

背任罪は、横領罪と非常に似ている罪です。横領罪は自分が占有する他人の物を横領した場合に成立しますが、これを業務上で行った場合は業務上横領罪となります。

横領罪に該当する場合は背任罪の構成要素をも満たす場合があります。横領罪と背任罪の両方ともが成立する場合は横領罪のみが成立すると解されます。これらの区別としては、物の不法領得や権限逸脱は横領罪、任務違背や権限濫用は背任罪とする見解があります。

背任罪は5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金で、時効は5年です。また、背任罪は未遂についても罰せられ、相対的親告罪に該当する罪です。

告訴状(背任罪)の記載方法

告訴状の様式と記載内容

告訴状は法定の様式はありませんので、任意の様式で作成すればいいのですが、刑法自体が民法と比較すると馴染みがなく、独特ですので、まずは当事務所か弁護士に相談されることを推奨します。一般的に告訴状は以下のように作成します。

  1. 告訴人と被告訴人の記載
    書類名(告訴状または告発状)、提出年月日(受理時に記載)、宛先(警察署長)、告訴人の氏名・押印、告訴人の住所(正確には住居)・職業・氏名・生年月日・電話番号、被告訴人の住所(正確には住居)・職業・氏名などわかっていることを記載します
  2. 告訴の趣旨
    どんな罪に該当するか、処罰を求める意思を記載します
  3. 告訴事実
    犯行の事実を年月日と時間、場所、犯行内容、被った被害などを詳細に記載します
  4. 告訴の事情
    告訴事実に記載した内容の前後にあった事情を記載します。告訴人と被告訴人の関係性や、事実を時系列で記載します
  5. 立証方法
    犯罪の事実を証明できる資料等はある場合は記載します。証言してくれる人がいる場合は陳述書を作成する方法もあります
  6. 添付書類
    証拠となる書類があれば告訴状に添付しますので、書類名を記載します

告訴事実の記載ポイント

被告訴人が、誰のために、どんな事務・任務に従事していたかを具体的に記載することにより、「他人のためにその事務を処理する者」の身分を保有していることを示します。これはまた、「その任務に背く行為」の内容を特定することにも繋がります。

また、事務については、その者に決裁権があり単独で処理できるものに限られず、他に決裁権を持つ者がいて、その者の補助する者として処理する場合も含みますので、そのような場合は、具体的に関係性がわかるように記載します。

犯行の日時、場所を示す日時・場所を必ず記載しますが、違背した任務の内容を明らかにするため、委託された事務の内容、遵守事項や義務を記載します。

そして、背任罪における目的を記載します。「利益を得るため、利益を得させるため、損害を加えるため」といったように背任罪が成立する要件を満たしていることを示します。

結果として、被害者に財産上の損害を加えたことを明らかにするように記載します。なお、損害の額については、出来る限り正確に記載するようにします。

 

今回の記事はここまでです。

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