養育費の取り決め

養育費は、離婚の方法のすべてにおいて取り決めする重要なものです。裁判所を利用しない協議離婚の場合は離婚協議書に養育費条項を記載します

裁判所を利用する場合は調停、審判、訴訟によります。これらすべての方法で取り決めします。離婚の際に養育費の取り決めをせずに離婚届を提出してしまった場合も方法はあります。

養育費が未払いになった場合

取り決めしていた養育費が支払われずに未払いになった場合、きちんと支払ってもらう必要があり、これを「未払い養育費の回収」ということがあります。

未払い養育費の回収にはいくつか方法がありますが、最も一般的で効果が高いのが「強制執行」による回収です。

強制執行とは、いわゆる「差押え」です。強制執行はその名のとおり「強制的に」「執行される」手続きで、とても効力が強いものです。では、強制執行について見て参りましょう。

未払い養育費の強制執行

強制執行で差押えが可能なもの

  • 債権
    給与、預貯金
  • 不動産
    家屋、土地
  • 動産
    現金、自動車・バイク、貴金属類、家具・家電製品

不動産については、民事執行予納金が必要で、原則90万円のため養育費の強制執行には不向きかもしれません。

また、動産については、66万円までの現金、仕事に使用する道具、日常生活必需品は差押えの対象外とされます。よって、最も効果的なものは給与の差押えということになります。

給与の差押え

養育費は手取りの2分の1(手取り額が66万円を超える場合は、33万円を超えた金額全額)が差押えの限度です。一般債権は4分の1までなので効力が強いことがわかります。

また、会社役員の場合、給与・賞与ではなく役員報酬を差押えすることにすると、その全額を差押えできます。

給与を差押える最大のメリットは、未払い分の差押えだけではなく、将来に支払うべき養育費の部分についても差し押さえが可能で、毎月の給与から自動で天引きされ、解除するまでは手続き不要で継続されることです。

強制執行には債務名義が必要

強制執行の手続きを申し立てる場合に必要なのは「債務名義」です。強制的に相手の財産を召し上げるためには強力な証拠が必要なのです。

債務名義は以下のようなものです。債務名義がない場合は債務名義を取ることになります。調停を申立てし、不調なら審判といった流れが一般的です。

  • 調停調書
    調停で決した場合に、合意を証するものとして交付されます
  • 審判書
    審判の手続きで決した場合に、決定を証するものとして交付されます
  • 判決文
    訴訟で判決によって決した場合に、判決内容を証するものとして交付されます
  • 強制執行認諾文言がある公正証書
    公証役場で作成する書面です。相手方が強制執行に服することを認めていなければ作成できません

強制執行は相手方の情報も必要

強制執行をするには相手方の情報が必要です。相手方の現住所はもちろん、給与の差押えする場合は相手方の勤務先、預貯金を差押さえする場合は銀行名・支店名などです。

離婚して日が経っている場合には引越しや転職していることも考えられるので、最新の情報を集めるのは簡単ではないかもしれません。

財産開示手続き

財産開示手続きというものがあります。相手方が裁判所に出頭して財産を開示する手続きです。債務名義が必要で、債務者の現在の住所地を管轄する地方裁判所に申立てをします。

債務者の出頭期日(おおよそ1か月後)に財産目録が提出されるので、その財産から強制執行をすることになります。

裁判所からの呼び出しを無視したり、虚偽の申述をすると、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」という厳しい罰則が設けられています。

また、無視された場合は刑事告発する手もあります。前科が付くことを恐れ、支払いに応じることが期待できます。

第三者からの情報取得手続き

財産の情報は、裁判所に調べてもらうこともでき、これを第三者からの情報取得といいます。この手続きは難解で利用要件も細かく設定されています。取得できる情報は以下のとおりです。

  • 勤務先
    市町村や日本年金機構へ照会
  • 預貯金
    銀行名だけで支店名は不要、本店へ照会
  • 不動産情報
    登記所へ照会
  • 株式等情報
    証券会社へ照会、店舗名不要

情報取得手続の申立人は、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者が該当します。主な要件は「過去6か月以内に強制執行の手続をしたが,完全な弁済を得られなかったこと」、「現在判明している債務者の財産からは完全な弁済を得られないこと」です。

さらに「不動産情報」と「勤務先情報」は,個別要件として,3年以内に財産開示手続きが実施されていることが必要とされます。

この手続きをお考えの場合、裁判所や弁護士に相談されることを推奨します。

 

今回の記事はここまでです。

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