遺言書の効力とは

遺言書の効力についてお問合せをいただくことがあります。遺言書の効力とは、「法的効力がある」遺言書であり、有効な遺言書ということです。有効な遺言書とは簡単にいうと以下のとおりです。

  • 形式・要式が法の定めに従っている
    遺言能力があり、遺言書の形式に沿っているという外形的に有効という意味合いです
  • 遺言書に記載された各条項に法的効力がある
    遺産分割の方法など、遺言書に記載された各条項が法的に有効であることで、その条項は「遺言事項」に該当するものです。遺言事項に該当しない記載内容については法的効力が発生しませんが、遺言書自体が無効になるわけではありません。
  • 無効・取消・撤回
    作成された遺言書が無効であったり取消・撤回をされていないことです。法的に有効であってもあとでこのような事由が発生すると無効となります

では、これらを見て参りましょう。

遺言書の形式が法に従っている

遺言能力がある

まずは、遺言書を書く人(=遺言者)に遺言能力がある必要があります。遺言能力は以下のとおりです。

高齢になり認知症の恐れがある場合は慎重にしなければならず、場合によっては遺言能力が認められなくなることもありますので早めに遺言書を作成することをおすすめします。

  • 15歳以上であれば単独で遺言をすることができます(意思能力があるとされる)
  • 被保佐人・被補助人
    遺言に関する制限の規定はありません。単独で遺言をすることができますが、状況によっては直前に医師の診断をうけて診断書を用意したり、遺言者の生活・病気の状況等を詳細に記録しておくことを推奨します
  • 成年被後見人
    成年被後見人が事理弁識能力を一時回復したときに医師2名以上の立会いで遺言できます。立ち会った医師は、遺言をするときにおいて事理弁識能力を欠く状態ではなかった旨を遺言書に付記して署名押印します

遺言書の方式が法に従っている

遺言書には以下のように大きく分けて3つの方式があります。これらは法で厳格に定められていますので、要件を満たしていなければ遺言書自体が無効になってしまいます。

遺言書の作成は下記のいずれかの方式を選択しなければなりません。

  1. 自筆証書遺言
    全文、日付、氏名をすべて自筆で書き上げる方式です。もっとも手軽に作成できますが、遺言書案は専門家に依頼して作成してもらうことを推奨します。財産目録部分を登記簿謄本や預貯金通帳コピーを利用できる「自筆証書遺言の緩和策」、法務局で遺言書を保管してくれて検認手続きも不要になる「遺言書保管法」を併せて利用することが望まれます
  2. 公正証書遺言
    遺言書案を作成し、公証役場で遺言書にしてもらう方式です。この場合でも専門家に依頼して遺言書案を作成してもらうことが肝要です。紛争の危険があろうと法的にグレーであろうとそのまま公正証書遺言になってしまうことも防げるからです
  3. 秘密証書遺言
    遺言者が書いた遺言書を封書に入れて封印し、公証役場へ持参してする方式ですが、利用件数が少なく割愛します

また、署名や押印といった外形的な要素も法に従った方式で作成しておく必要があります。

ドラマや映画で遺言書の効力をテーマにしたサスペンスがありますが、現実には形式が法に沿わないから無効になることの方が圧倒的に多いのです。

遺言書の記載内容が法的に有効である

遺言書に記載する内容が法に従っていることが必要です。公序良俗に反する内容はもちろんNGですが、そもそも法的効力が発生するのは「遺言事項」といわれる下記のもの(代表的なもの)に限ります。

  • 未成年の後見人及び後見監督人の指定
    相続人が未成年である場合など
  • 相続分の指定又は指定の委託
    先妻の子、後妻の子がいるとき、第三者に分割を委任したい場合など
  • 遺産分割方法の指定又は指定の委託
    特定の相続人に財産を多く与えたい場合など
  • 遺産分割禁止
    最高5年間は遺産分割を禁止したい場合
  • 遺言執行者の指定又は指定の委託
    遺産分割手続きをする人を信頼ある人に指定したい場合
  • 遺言認知
    未認知の子がいる場合
  • 推定相続人の廃除及びその取消し
    財産を与えたくない相続人がいる場合など
  • 遺贈
    内縁の妻など相続人以外でお世話になった人等に財産を与えたい場合
  • 特別受益者の持戻免除
    相続前に贈与した物は遺産分割に含めない場合など
  • 財団法人設立のための寄付行為
    遺産を福祉事業などに寄付したい場合など
  • 祭祀承継者の指定
    特定の人にお墓を守ってもらいたい場合など

遺言の無効・取消・撤回

  • 遺言の無効
    先述したように法の定めに従っていない遺言は無効です。また、公序良俗に反する遺言や錯誤(簡単にいうと勘違い)による遺言も無効となります
  • 遺言の取消し
    詐欺や脅迫による遺言は取り消すことができます
  • 遺言の撤回
    遺言者はいつでも遺言の全部または一部を撤回することができます。新たな遺言書に前回作成の遺言書の全部または一部を取り消す旨を記載して撤回することもできます
  • 遺言の撤回みなし
    遺言者自身が遺言の目的物を処分・破棄した場合は撤回したとみなされます。また、前回作成の遺言書に記載した内容が新しく作成した遺言書の内容が抵触する場合、あとで作成した遺言が有効

予備的遺言について

遺言者よりも先に推定相続人のひとりが死亡した場合、相続させる人がいなくなってしまいます。

遺産分割協議を行って遺産分割する場合であれば代襲相続人に相続させることになりますが、遺言書の場合は当然に代襲は認められません。

遺言書に特定の相続人が死亡した場合の分割方法を記載することによって、このような事態に対応できます。

もっとも、タイミング次第では新たな遺言書を作成することにより何の問題もなく対応できます。

今回の記事はここまでです。

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