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隣地承諾書とは
農地転用の手続きをする場合、添付書類のなかに隣地承諾書というものがあります。隣地承諾書とは、申請する農地に隣接している土地が農地の場合、その農地の所有者(隣地者)に対して、計画している農地転用の内容を説明をし、承諾していただいたことを証する書類です。
では、隣地者が承諾しなければ農地転用の許可が下りないのでしょうか。農地転用は農地法という法律が根拠となって許可条件が定められています。許可条件には立地基準と一般基準とがあります。
これらの許可条件に「隣地者の承諾を得ていること」はありませんので、隣地者の承諾が得られない場合、つまり隣地承諾書を提出できない場合でも、これが直接に不許可の理由とはならないことになります。
農林水産省からは通知が発せられている
農地転用はローカルルールが多く、他の許認可と比較しても断然です。本来は、農地法に根拠がない書類や資料を申請者に求めてはいけないのですが、各市町村では遵守されているとはいえません。
農林水産省は「農地転用許可事務の適正化及び簡素化について(令和4年3月31日付3農振第3013号農林水産省農村振興局長通知)」によって、農地転用許可申請に係る添付書類については、申請者に過分な負担を課すことのないよう、審査に際して特に必要なものに限定するとともに、添付義務のない書類の添付を求める場合には、その書類の必要性について申請者に丁寧に説明をすることが望ましいとしています。
しかしながら、実際には「必要書類」として記載されているだけですし、後で記述するように隣地承諾書の方がまだいいということになっています。
何故、それでも添付義務のない書類を求めるのか、理由はちょっと考えればわかります。窓口で問い合わせても「今までずっと出してもらってたので…」だと思いますが。
隣地承諾書の扱いは市町村により異なる
農林水産省から通知があったものの、市町村によって隣地承諾書についての扱いは異なります。農地法という根拠法規があっても全国統一ではないのです。
相変わらず農地転用許可申請の必要書類のなかに隣地承諾書を含める市町村、隣地承諾書は廃止になったものの隣地者に対して説明をした旨の詳細な説明状況を書類にしなければならない市町村に区別されています。
当事務所では、上記のような大いなる疑問を持ちつつも、ご依頼人の利益が最優先なので、必要だと言われたら作成して添付するだけのことです。
隣地承諾書の内容
隣地承諾書の対象となる土地
隣地者となる方は、申請地に接する土地が田や畑といった農地である場合の土地所有者です。実務としては、公図を取得して申請地に接する土地を確認し、さらにその土地の登記簿(登記情報でもよい)を取得して地目を確認します。
申請地に接する土地とは、面だけではなく「点」で接する土地も含みます。所有者が国や自治体の場合は対象にはしません。ただし国や自治体が地上権等を設定している場合は別に必要なことが増えますがここでは割愛します。
地目が農地であれば対象ですが、地目が農地以外の場合でも現況が農地であれば対象となることが多いので、管轄の農業委員会事務局に問い合せをすることを推奨します。
隣地承諾書の記載項目
市長村によって若干の項目の違いがあるかもしれませんが、記載内容はおおむね同じだと考えることができます。隣地承諾書に記載する項目は以下のとおりです。
- 転用しようとする土地の表示ならびに所有者と耕作者
ここには申請地の所在や地番、地目、面積、所有者、耕作者を記載します - 転用事業者氏名
農地転用の転用事業者の氏名(法人の場合は法人名称と代表者氏名)を記載します - 転用の目的
農地転用をしてどんなことに使用するのかという転用目的を記載します。太陽光発電施設、自宅建築、資材置場などです - 農地転用することについて隣地者が承諾した旨
隣接の土地の表示、所有者と耕作者の住所・氏名を記載します。隣地者に農地転用の説明をし、承諾を得た場合に記載します。隣地者の押印の必要有無は市町村により異なります。
これが一般的な隣地承諾書の内容です。申請人ご本人が隣地者へ説明する場合もあれば、農地転用を行政書士に委任する場合のように行政書士が隣地者へ説明する場合もあります。
隣地承諾書を廃止している市町村の場合
長浜市のように隣地承諾書を廃止しているケースではどのようにしなければならないのかを記述します。長浜市の場合は「周辺農地における営農への被害防除に関する説明書」を添付しなければならず、この説明書の中に隣地承諾書と同様の記載項目があります。
正直、隣地承諾書の方がはるかに簡潔です。そもそも隣地承諾書を求めてはならない旨の通知の趣旨目的からは逸脱しているとしか思えません。(でも作成します。ご依頼人の利益のためですから)
周辺農地における営農への被害防除に関する説明書の記載項目
隣地承諾書に対応する記載項目は、「周辺農地の所有者・耕作者等との事業計画や被害防除に関する説明状況」です。具体的に記載するのは、以下のとおりです。(隣地者それぞれに対して記載する)
- 説明した年月日
- 説明した相手方(氏名・住所・所有者耕作者の別)
- 相手方からの意見等の有無
- 相手方からの意見等がある場合、それに対する被害防除策
- 説明が困難な場合はその理由(適宜、別紙添付)
何故か「相手方」として隣地者と対立構造になっており、隣地承諾書の場合よりも、むしろ添付する書類が多くなる恐れもあります。
さらに、この書類の末尾には、地元自治会長との事業計画や被害防除に関する説明状況について、隣地者に対して行ったことと同様の内容にて記載する必要があります。
登記簿上の所有者がいない場合
登記簿上の所有者がいない場合があります。すでにお亡くなりになっていて、相続登記が未了である場合などです。その場合は、実際の管理者や耕作者にご説明・依頼をして隣地承諾書に押印してもらい、さらに経過書を添付します。
相続人を探してまで説明と押印取得をしなければならないというわけではありませんが、これもお住まいの地域の農業委員会事務局の判断によりますので、ご自身で手続きされる場合は確認が必要です。
今回の記事はここまでです。
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