忘れがちな消防法の届出

飲食店を営もうとする際、まずは食品衛生責任者を選任し、保健所に飲食店営業許可申請をします。その上、義務化されたHACCPにも対応しなければならず、開店準備で忙しいのにやることがいっぱいです。ここで忘れがちなのが消防法に係る届出です。消防法の法令遵守を怠り届出の義務を果たしていない店舗で有事の際には重い責任がのしかかることになってしまいます。

消防法の届出は対象の店舗により異なる

ご自身で消防法の届出をされる場合は、必ず管轄の消防署に確認してからにしましょう。消防法はあらゆる業種・業態・規模について一括して統合的に定めているわけではなく、それぞれ必要な届出は異なるからです。当記事では、一般的に必要となることが多い消防法の届出をご紹介します。

防火対象物使用開始(変更)届出

店舗の開業時やその建物またはその部分を使用開始する場合、防火対象物使用開始(変更)届を使用開始日の7日前までに届出します。防火対象物使用開始(変更)届は、届出者、建築面積、消防用設備等などを記入し、添付書類は、防火対象物(店舗)の配置図や平面図、消防用設備等の設計図書が必要です。

防火対象物とは、店舗など届出をする対象です。防火対象物には特定防火対象物と非特定防火対象物があり、飲食店や風俗営業店など、その建物を利用する人が決まっていない建物は特定防火対象物になります。

防火管理者選任届

防火管理者を選任しなければならない対象となるのは、以下のとおりです。また、該当する場合は防火管理者の選任とともに消防計画の作成・提出も必要です。

  1. 社会福祉施設等で、出入し、勤務し、または居住する人数が10人以上
  2. 飲食店など不特定多数の人が出入する建物のうち、建物全体の収容人数が30人以上
  3. 共同住宅、事務所など特定の人が出入する建物のうち、建物全体の収容人数が50人以上

専任する防火管理者には甲種と乙種の2種類があり、以下のとおりです。長浜市・米原市の場合は「防火防災管理者選任届」という様式を届出します。

  1. 選任の必要なし ⇒ 収容人員が30人未満
  2. 乙種防火管理者 ⇒ 収容人員が30人以上、かつ、延べ面積が300㎡未満
  3. 甲種防火管理者 ⇒ 収容人員が30人以上、かつ、延べ面積が300㎡以上

収容人員とは、席数+従業員数です。従業員数も忘れずカウントしなければなりません。

消防計画の作成

消防計画は、その店舗の防災・消火に関するルールブックのようなもので、防火管理者が作成して消防計画作成(変更)届出書に添付して届出しなければなりません。消防計画に記載する一般的な記載内容は以下のような項目です。ただし、防火対象物の規模によっても異なります。ここでは小規模の防火対象物を想定しています。

  • 「目的」火災等の予防、人名安全確保、被害の防止などです
  • 「適用範囲」消防計画の適用範囲を明確にします
  • 「管理権原者」管理権原者の業務と権限を明確にします。防火管理者の選任も業務のひとつですので記載しておきましょう。建物や消防用設備の欠陥に対する改修は管理権原者が担います
  • 「防火管理者」防火管理者の業務と権限を明確にします。消防計画の作成、避難訓練、防災教育、法定点検、防火管理維持台帳、自衛消防隊など重要な業務が多いのが防火管理者です
  • 「消防機関への報告」点検結果や消防訓練についても記載します
  • 「予防管理組織」火元責任者(担当区域)を明確にします
  • 「火元責任者」火元責任者の業務についてです。消防用設備等の維持管理について定めます
  • 「自主点検検査員」自主点検の検査員を明確にし、自主点検票も作成します。火元責任者がする自主点検について火元責任者表を作成します
  • 「自主点検検査の時期」施設・設備ごとに定期点検するタイミングを明確にします。建物等の日常の点検は毎日終業時とします
  • 「消防用設備」消防用設備の法定点検についてです。点検結果を年に1回消防長または消防署長に報告します
  • 「防火対象物」防火対象物の法定点検についてです。こちらも点検結果は年に1回消防長または消防署長に報告します。法定点検を外部委託でする場合も記載します
  • 「防火管理者への連絡」事前の連絡が必要なケースを列記します
  • 「従業員」従業員の遵守事項を記載します
  • 「火気使用時」火気使用時の遵守事項を記載します
  • 「自衛消防組織」自衛消防組織を編成します。編成表も作成し任務分担を明確にします
  • 「避難経路図表」消防用設備の設置位置も記載した経難経路図を作成・掲示します。
  • 「震災予防措置」地震時の被害拡大を防止するための条項です
  • 「地震後の安全措置」地震発生後の点検検査についてです
  • 「震災に備えての準備品」持ち出しできるように準備します
  • 「地震時の活動」地震時の活動を定めます。指定避難場所を確認しておきます
  • 「防災教育」従業員に対する防災訓練の計画です
  • 「消防訓練」消防訓練の実施時期等を定めておきます

消防計画とはいえ、火災だけではなく地震についても計画しておく必要があります。大きな震災が発生している現状、火災だけでは対応しきれず震災(地震+火災)についての消防計画もしっかり作成しておきましょう。

これらの他にも、消防用設備等設置届、炉・厨房設備等設置届も必要な場合があります。

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