農地法第3条の許可

農地法第3条は、農地を耕作目的で売買、贈与、貸借する場合は農業委員会の許可が必要ということです。農地を農地のままで他人に使わせるということです。日本の農業を保護するために、譲受人もしっかり耕作ができるのか否かを重要視するわけです。

なお、全国的な耕作者の減少やなり手の減少により、近年では許可要件が緩和されています。移住を伴って農業従事者になろうとする若い方もおられるので、要件緩和はいいことだと思われます。

農地法第3条の許可要件

全部効率利用要件

申請農地を含め、所有している農地または借りている農地のすべてを効率的に耕作することです。

この要件は、自ら効率的に利用して耕作をせずに、他人に転売したり、貸し付けたりして、効率的な利用をせず保有するために権利を取得しようとすることを防止するためのものです。

申請(農地法第3条許可申請)の際には譲受人が申請地に何を作付けするのかを明らかにしなければなりませんし、農機具(所有あるいはリース)の使用状況も明らかにしなければなりません。申請前にこれらの計画も立てておく必要があります。

法人の場合については、農地所有適格法人の要件を満たす必要があります。ただし、解除条件付の貸借契約であれば、一般の法人でも借りられる場合もあります。

農作業常時従事要件

申請者または世帯員等が農作業に常時従事することが必要です。常時従事の判断ですが、年間で150日以上農作業に従事している場合は常時従事していると認められます。

150日未満であっても必要な農作業がある限り農作業に従事していれば、短期間に集中的に処理しなければならない時期に、他に労働力を依存しても常時従事していると認められる場合があります。

申請時には農作業従事者全員の年間スケジュール(予定)を明らかにしなければなりませんので、農業従事者についても、計画を立てておく必要があります。

地域との調和要件

申請農地の周辺の農地利用に影響を与えないことが必要です。第3条は、農地のままで利用するので現状と大きな変更をしない限り大丈夫なことが多いです。

ちなみに農地転用の場合は、農地が農地以外となるわけですので、水利に影響があると考えられるため、この要件が厳しく設定されています。

また、水利を阻害するか否かのみならず、調和要件ですので、地域の農地の利用調整に協力すること、また、農薬の使用方法については、地域の防除基準に従うことが要件として考えられます。

この要件は、譲受人が所有する農地に隣接する農地を取得するケースと、離れている土地を取得するケースとでは若干異なることになります。

農地中間管理機構の農地売買制度

当記事に記述したとおり、農地を農地のままで売買する場合には農地法3条許可申請が必要です。ただし、農地売買にはもうひとつ方法があります。

買い手が認定農業者の場合には、農地中間管理機構の制度を利用できる可能性があります。この制度は「許認可」ではないので許可申請は不要です。

農地の相続の場合は例外とされる

また、農地を相続した場合も所有者が変わりますが、農地法3条許可申請は不要です。この場合は、相続登記を済ませてから届出をすればOKです。

農地法
(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
第三条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。
一 第四十六条第一項又は第四十七条の規定によつて所有権が移転される場合
二 削除
三 第三十七条から第四十条までの規定によつて農地中間管理権(農地中間管理事業の推進に関する法律第二条第五項に規定する農地中間管理権をいう。以下同じ。)が設定される場合
四 第四十一条の規定によつて同条第一項に規定する利用権が設定される場合
五 これらの権利を取得する者が国又は都道府県である場合
六 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)、農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)、集落地域整備法(昭和六十二年法律第六十三号)又は市民農園整備促進法(平成二年法律第四十四号)による交換分合によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合
七 農地中間管理事業の推進に関する法律第十八条第七項の規定による公告があつた農用地利用集積等促進計画の定めるところによつて同条第一項の権利が設定され、又は移転される場合
八 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第二条第三項第三号の権利が設定され、又は移転される場合
九 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律(平成十九年法律第四十八号)第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第五条第十項の権利が設定され、又は移転される場合
九の二 農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(平成二十五年法律第八十一号)第十七条の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第五条第四項の権利が設定され、又は移転される場合
十 民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)による農事調停によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合
十一 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律によつて農地若しくは採草放牧地又はこれらに関する権利が収用され、又は使用される場合
十二 遺産の分割、民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百六十八条第二項(同法第七百四十九条及び第七百七十一条において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与に関する裁判若しくは調停又は同法第九百五十八条の二の規定による相続財産の分与に関する裁判によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合
十三 農地中間管理機構が、農林水産省令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農業経営基盤強化促進法第七条第一号に掲げる事業の実施によりこれらの権利を取得する場合
十四 農業協同組合法第十条第三項の信託の引受けの事業又は農業経営基盤強化促進法第七条第二号に掲げる事業(以下これらを「信託事業」という。)を行う農業協同組合又は農地中間管理機構が信託事業による信託の引受けにより所有権を取得する場合及び当該信託の終了によりその委託者又はその一般承継人が所有権を取得する場合
十四の二 農地中間管理機構が、農林水産省令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地中間管理事業(農地中間管理事業の推進に関する法律第二条第三項に規定する農地中間管理事業をいう。以下同じ。)の実施により農地中間管理権又は経営受託権(同法第八条第三項第三号ロに規定する経営受託権をいう。)を取得する場合
十四の三 農地中間管理機構が引き受けた農地貸付信託(農地中間管理事業の推進に関する法律第二条第五項第二号に規定する農地貸付信託をいう。)の終了によりその委託者又はその一般承継人が所有権を取得する場合
十五 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下単に「指定都市」という。)が古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(昭和四十一年法律第一号)第二十条の規定に基づいてする同法第十二条第一項の規定による買入れによつて所有権を取得する場合
十六 その他農林水産省令で定める場合
2 前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。ただし、民法第二百六十九条の二第一項の地上権又はこれと内容を同じくするその他の権利が設定され、又は移転されるとき、農業協同組合法第十条第二項に規定する事業を行う農業協同組合又は農業協同組合連合会が農地又は採草放牧地の所有者から同項の委託を受けることにより第一号に掲げる権利が取得されることとなるとき、同法第十一条の五十第一項第一号に掲げる場合において農業協同組合又は農業協同組合連合会が使用貸借による権利又は賃借権を取得するとき、並びに第一号、第二号及び第四号に掲げる場合において政令で定める相当の事由があるときは、この限りでない。
一 所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を取得しようとする者又はその世帯員等の耕作又は養畜の事業に必要な機械の所有の状況、農作業に従事する者の数及び配置の状況、この法律その他の農業に関する法令の遵守の状況等からみて、これらの者がその取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地の全てを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められない場合
二 農地所有適格法人以外の法人が前号に掲げる権利を取得しようとする場合
二の二 農業経営基盤強化促進法第十六条の三第一項に規定する認定経営発展法人(第五条第二項第九号において単に「認定経営発展法人」という。)から第一号に掲げる権利を取得しようとする場合(当該認定経営発展法人がその農業経営発展計画(同法第十六条の二第一項に規定する農業経営発展計画をいう。第五条第二項第九号において同じ。)に記載する同法第十六条の二第二項第五号イ及びロに掲げる事項としてこれらの権利の設定又は移転について同条第一項又は同法第十六条の三第一項の認定を受けている場合を除く。)
三 信託の引受けにより第一号に掲げる権利が取得される場合
四 第一号に掲げる権利を取得しようとする者(農地所有適格法人を除く。)又はその世帯員等がその取得後において行う耕作又は養畜の事業に必要な農作業に常時従事すると認められない場合
五 農地又は採草放牧地につき所有権以外の権原に基づいて耕作又は養畜の事業を行う者がその土地を貸し付け、又は質入れしようとする場合(当該事業を行う者又はその世帯員等の死亡又は第二条第二項各号に掲げる事由によりその土地について耕作、採草又は家畜の放牧をすることができないため一時貸し付けようとする場合、当該事業を行う者がその土地をその世帯員等に貸し付けようとする場合、その土地を水田裏作(田において稲を通常栽培する期間以外の期間稲以外の作物を栽培することをいう。以下同じ。)の目的に供するため貸し付けようとする場合及び農地所有適格法人の常時従事者たる構成員がその土地をその法人に貸し付けようとする場合を除く。)
六 第一号に掲げる権利を取得しようとする者又はその世帯員等がその取得後において行う耕作又は養畜の事業の内容並びにその農地又は採草放牧地の位置及び規模からみて、農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる場合
3 農業委員会は、農地又は採草放牧地について使用貸借による権利又は賃借権が設定される場合において、次に掲げる要件の全てを満たすときは、前項(第二号及び第四号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、第一項の許可をすることができる。
一 これらの権利を取得しようとする者がその取得後においてその農地又は採草放牧地を適正に利用していないと認められる場合に使用貸借又は賃貸借の解除をする旨の条件が書面による契約において付されていること。
二 これらの権利を取得しようとする者が地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること。
三 これらの権利を取得しようとする者が法人である場合にあつては、その法人の業務を執行する役員又は農林水産省令で定める使用人(次条第一項第三号において「業務執行役員等」という。)のうち、一人以上の者がその法人の行う耕作又は養畜の事業に常時従事すると認められること。
4 農業委員会は、前項の規定により第一項の許可をしようとするときは、あらかじめ、その旨を市町村長に通知するものとする。この場合において、当該通知を受けた市町村長は、市町村の区域における農地又は採草放牧地の農業上の適正かつ総合的な利用を確保する見地から必要があると認めるときは、意見を述べることができる。
5 第一項の許可は、条件をつけてすることができる。
6 第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。

今回の記事はここまでです。

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当事務所の農地転用の業務(代表例)
  1. 農地転用5条許可申請(届出)
  2. 農地転用4条許可申請(届出)
  3. 農地法3条許可申請
  4. 農地中間管理機構の農地売買
  5. 農地の相続手続き
  6. 土地改良区の手続き
  7. 景観法届出

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