深夜酒類提供飲食店とは

飲食店営業を始める際には、業態にあわせて必要な許可や届出が必要です。最も知名度が高いのは飲食店営業許可だと思います。当記事の深夜酒類提供飲食店営業については、飲食店営業許可も必要ですが、午前0時以降に酒類を提供する場合に届出が必要なのです。

これを深夜酒類提供飲食店営業営業開始届といい、届出先は管轄警察署を経由して公安委員会です。「深夜」とは午前0時から午前6時です。「酒類」とはアルコール飲料ですが、ファミレス、ラーメン店のように酒類がメニューにあっても、常に主食を提供していること、客が主食を食している時間が長いのであれば届出は不要です。

似て非なるものとして、風俗営業許可があります。業態がスナックやキャバクラなら風俗営業許可が必要ですが、その違いを含め深夜酒類提供飲食店営業は以下のように考えることができます。

  • 深夜酒類提供飲食店営業は「接待」は不可。接待アリなら風俗営業許可が必要
  • 深夜酒類提供飲食店営業は0時以降も営業できるが、風俗営業許可は午前0時まで
  • 深夜酒類提供飲食店営業は届出制、風俗営業許可は許可制
  • 接待ナシで深夜0時以降は営業しないのであれば、飲食店営業許可だけでよい
  • 深夜酒類提供飲食店営業は0時以降の遊興はできない
  • 同一営業所で深夜酒類提供飲食店営業と風俗営業許可の両方の営業は原則不可

接待と遊興について

深夜酒類提供飲食店営業と風俗営業の区別、または深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要なのか否かを判断するうえで欠かせないのは、接待と遊興です。

接待の例

お酌や談笑することは接待にあたります。特定少数の客の近隣にはべる状態も該当します。カウンターの中で客の注文に応じて飲食物を提供するだけの行為は接待とはいえないでしょう。

挨拶や少々の世話話も接待とはいえない場合が多いでしょう。ガールズバーでよく言われるのが、店員はカウンターの中にいるので接待ではないということですが、そもそも接待かどうかを決めるのは店側ではありません。

風営法改正により、無許可営業や名義貸しは厳罰化されています。個人は5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、法人の場合は法人は両罰規定で3億円以下の罰金です。

特定少数の客に対して客室で、ショー・歌・踊り等をみせる行為は接待になります。ディナーショーや大広間のショーのように不特定多数の客に対しては接待とはいえない場合が多いです。

特定少数の客の近隣にはべり、その客に対してカラオケ等を歌うことを勧奨し、もしくは歌に手拍子をとり、拍手をし、もしくは褒めはやす行為または客とのデュエットは接待に当たります。不特定の客からカラオケの準備の依頼を受ける行為又は歌の伴奏のため楽器を演奏する行為等は、接待には当たりません。

特定の客のダンス相手、その客にダンスをさせる行為は接待に当たります。客の身体に接触しない場合でも、特定少数の客の近くで継続して一緒に踊る行為も同様でしょう。

特定少数の客と共にゲームや競技等を行う行為は、接待に当たります。これに対し、客一人で又は客同士でゲームや競技等を行わせる行為は、直ちに接待に当たるとはいえないでしょう。

遊興の例

遊興は、ショーや演奏を客にみせる鑑賞型のサービスと、客に遊戯やゲーム等を行わせる参加型のサービスが考えられます。店員が積極的に不特定の客に働きかけるのは遊興に当たることがほとんどです。ショー等を鑑賞するよう客に勧める行為、実演者が客の反応に対応し得る状態で演奏・演技を行う行為等は、積極的な行為に当たります。

単に映像や録音された音楽を流すような場合は、積極的な行為には当たりません。遊戯等を行うよう客に勧める行為、遊戯等を盛り上げるための言動や演出を行う行為等は、積極的な行為に当たります。客が自ら遊戯を希望した場合や、客の遊戯に対して店側が何の反応もしないような場合は、積極的な行為には当たりません。

カラオケは接待か?

よくあるカラオケについては、カラオケ装置を設置するだけで直ちに接待になるものではありません。不特定の客が自分から歌うことを要望した場合に、マイクを手渡してカラオケ装置を操作することは接待ではありません。

深夜酒類提供飲食店営業営業開始届の要件

営業所所在地が営業禁止地域ではないこと

都道府県条例で営業禁止地域に指定されているところでは営業できません。都市計画法の第一種地域は禁止のため、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域および田園住居地域は不可です。

営業所の要件

  1. 客室が2室以上ある場合、その床面積が1室につき9.5㎡以上である必要があります。客室が1室だけの場合は制限はありません。5㎡以下だと風俗営業許可5号営業に該当する恐れがあります
  2. 客室内に見通しを妨げる設備(おおむね高さ1m以上の仕切り、つい立て、カーテン、イス等)がないこと
  3. 風俗環境を害する恐れのある写真や装飾等を設けないこと
  4. 客室の出入口に施錠できる設備を設けないこと(店舗外へ直接通ずる出入口は除く)
  5. 営業所内の照度が20ルクスを超えること。スライダックス(調光付き)は不可です
  6. 騒音または振動の数値が都道府県の条例に定める数値に満たないように維持する構造、設備であること

深夜酒類提供飲食店営業営業開始届の必要書類

深夜酒類提供飲食店営業営業開始届の必要書類のなかには、作成する書類、取得する書類に加えて平面図や立面図といった図面があります。

必要書類は以下のとおりですが、これら以外にも警察署から提出するよういわれる場合もあります。なお、深夜酒類提供飲食店営業営業開始届は営業を開始しようとする10日前までにしなければなりません。

  • 深夜酒類提供飲食店営業営業開始届出書
  • 営業の方法を記した書類
  • 営業所の平面図
  • 照明・音響・防音に関する立面図
  • いす、テーブル、衝立の立面図
  • 申請者の住民票の写し(本籍地記載) ※法人の場合は役員全員の分
  • 営業所の使用権限を証明する書類
  • 飲食店営業許可証
  • 法人の場合、定款と法人の履歴事項全部証明書
  • 土地・建物の登記簿謄本
  • 用途地域証明書

営業までに従業員名簿を作成・備え置き

従業員名簿に記載する事項は、①氏名②住所③性別④生年月日⑤採用年月日⑥従事する業務の内容⑦退職年月日です。深夜酒類提供飲食店営業は、生年月日、本籍地について本籍の記載がある住民票で確認し、コピーを従業員名簿と綴じ合わせることも必要です。なお、従業員名簿は退職日から記載して3年を経過する日まで備え付けておきましょう。

深夜酒類提供飲食店営業で他に必要なこと

飲食店営業許可、深夜酒類提供飲食店営業営業開始届出の他にも必要なことがあります。まずは、食品に関わるほぼすべての業種で完全義務化されたHACCPです。

HACCPは許認可や資格は不要ですが、店主自らが継続して対応し続ける必要があるので、営業開始までにルーティン化しておくことをおすすめします。

さらに、これらよりも重要度が高いのが消防法の届出です。無許可営業やHACCP未導入は店主の自己責任として責任を取れますが、消防法の未届は責任が取れないことにもなりかねません。

今回の記事はここまでです。

行政書士かわせ事務所は民事・刑事の書類作成や手続き、許認可の申請や届出を承ります。ご相談・ご依頼をご希望の方はホームページをご覧いただき、お電話かWEB問合せからご予約願います。

当事務所の営業許可の業務(代表例)
  1. 飲食店営業許可
  2. 古物商許可
  3. 解体工事業登録
  4. 電気工事業者登録
  5. 金属屑商申請・金属屑行商届出
  6. 土地売買等届出
  7. HACCP導入サポート
  8. 軽貨物運送事業の届出

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