遺産分割協議は相続人全員で行う

まず最初に遺産分割協議についてです。相続は被相続人の死亡と同時に開始となります。

この時点で被相続人の遺産は誰のものになっているかというと、相続人全員の共有となっています。

共有ですので相続人の誰かが処分(使うということです)することはできません。そこで相続人全員で遺産分割協議をして遺産を分割するのです。

遺産分割協議は「誰が、何を、どれだけ」取得するのかを相続人全員で協議して決めるということです。

決まったら遺産分割協議書をいう書類を作成し、これを遺産の分割の手続きに添付書類として使用します。

なお、遺産分割協議には「共同相続人の1人でも分割の請求をすれば他の相続人は分割に応じなければならない」という定めもあります。

では、遺産分割協議に参加するのは相続人全員と記述しましたが、厳密には相続人に加えて包括受遺者、遺言執行者(いる場合)、相続分を譲り受けた者も参加します。

遺産分割協議の無効

遺産分割の内容に反している相続人や行方不明者を除いての遺産分割協議は無効となります。

ただし、相続人のひとりが遺産分割協議案を作り、その内容につき全員の承諾が得られれば有効となります。

また、要素に錯誤がある遺産分割協議、公序良俗に反する内容の遺産分割協議は無効になりますので注意しなければなりません。

遺産分割協議の取消しと解除

詐欺や強迫による遺産分割協議は取り消すことができます。一旦は有効に成立したとしても詐欺や強迫(刑事の脅迫ではありません)が発覚すると取り消すことができるのです。

また、取消しと似ていますが解除も可能です。解除は、共同相続人全員の合意があれば、合意解除として遺産分割のやり直しをすることができます。

未成年者が相続人に含まれる場合

もちろん未成年者も相続人になれます。ただし、いざ相続手続きになると名義変更や遺産分割手続きは法律行為なので未成年者単独ではできないのです。

未成年者を法的に保護しているからなのです。

法的保護の例は「悪徳業者から何十万もする参考書セットを購入してしまった」ケースにように社会的・経済的に自立していない未成年者に契約権限を付与してしまうと大きな経済的な損失を被ってしまう恐れがあり、これを防止する目的です。

ちなみに、未成年者であっても、婚姻すると成年者とみなされます。これは成年擬制という制度です。

未成年者に代わって法律行為を行う者

未成年者の場合は法定代理人、つまり法律で定められた代理人が代わって法律行為をすることになります。

通常の場合、親権者である父母がなりますが、親権者がいない場合、または親権者が財産の管理権をもっていないという場合には、未成年後見人がなります。

ほとんどの場合が親権者が代理人ということになります。親権者は両親が婚姻中の場合は共同親権となっています。離婚すると父か母のどちらかが単独で親権を取得することになります。

利益相反行為とは

相続手続きの場合、遺言書が無い場合は相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。先述のとおり、未成年者は法律行為ができないので代理人が遺産分割協議に参加することになります。

ところが、親権者が法定代理人になると問題が生じる場合があります。

それは、親と子の利益が相反する内容である場合、利益相反行為になり、この親権者は法定代理人になれないのです。

遺産分割協議では代理人として親が参加しようにも、その親自体が相続人であれば自分の利益が子の利益を損なう結果になることがあり、代理人の立場としては子の利益が自分の利益を損なう結果になることがあるからです。

利益相反行為の事例(1)

父が死亡し、配偶者である母と小学5年生の息子が相続をする場合。この場合、利益相反行為になり母は息子の法定代理人にはなれません。

では、どのようにするかといいますと、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求します。家庭裁判所に法定代理人を用意してもらうのです。

こうして選任された特別代理人と母とで遺産分割協議を行います。

利益相反行為の事例(2)

父が死亡し、配偶者である母と中学2年生の息子、小学6年生の娘が相続する場合。この場合は未成年者が2名なので、息子と娘のそれぞれに特別代理人の選任を請求しなければなりません。

こうして選任された特別代理人2名と母とで遺産分割協議を行います。遺産分割協議は、相続人全員で行わなければ、有効に成立しないからです。

このように未成年者が相続人に含む場合は、特別代理人を選任してもらう期間を考えなければならず、通常の相続手続きよりも大幅に時間がかかることになってしまいます。

特に相続税が課税されるケースでは、相続税申告は10か月以内と定められているので早めに取り掛かることをおすすめします。

特別代理人選任の手続き

  1. 子の住所地を管轄する家庭裁判所へ特別代理人選任の申立てをする
  2. 申立人宛てに家事審判期日通知書と照会書が送付される
  3. 照会書を同封の返信用封筒で返信
  4. 申立人は、通知書に記載された日時に家庭裁判所へ出頭する
  5. 2週間程度(即日もあり得る)で申立人宛てに審判書が送付される
  6. 特別代理人の決定

申立てに必要な物は、特別代理人選任申立書、申立人(親権者)の戸籍謄本、子の戸籍謄本(申立人と同戸籍なら不要)、特別代理人候補者の戸籍謄本と住民票、遺産分割協議書(案)です。

相続手続きを承ります

行政書士かわせ事務所公式ホームページの「相続手続きのページ」もご覧下さい