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任意後見契約とは
任意後見契約とは、委任者(被後見人)が、受任者(後見人)に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護、財産管理に関する事務を委託し、その事務について代理権を付与する委任契約です。
任意後見契約の利用形態は、将来型、移行型、即効型の3類型に分類することができます。
将来型の任意後見契約
委任者が、将来判断能力が低下した時点で任意後見契約の効力を発生させるものであり、これが任意後見契約に関する法律の法文に則した、原則的な形態です。
移行型の任意後見契約
委任者が、契約締結の時点から受任者に財産管理等一定の事務を委託し、自己の判断能力が低下した後には、任意後見監督人の監督の下で受任者に事務処理を続けさせるという契約形態です。
任意代理の委任契約から任意後見契約への移行は、本人の判断能力が低下した時点で、本人、親族又は任意後見受任者が家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てをし、これが選任されたときに、任意後見契約の効力が発生することをもって行われます。
即効型の任意後見契約
任意後見契約の締結の直後に契約の効力を生じさせるという契約形態です。
任意後見契約を締結するために必要な意思能力はあるものの、概して判断能力が不十分な状態にある方が、法定後見による支援より任意後見による支援を受けることを選択するという例外的な場合に、この即効型の契約形態が利用されます。
任意後見契約書の条項
任意後見契約書に記載する主な条項と留意すべき点は以下のとおりです。本記事では移行型の任意後見契約書を取り上げています。
第1 委任契約
- 契約の趣旨及び効力
- 任意後見契約との関係
- 委任事務の範囲(代理権目録)
- 費用の負担
- 報酬
- 報告
- 契約の変更
- 契約の解除
- 契約の終了
第2 任意後見契約
- 契約の趣旨
- 契約の発効
- 後見事務の範囲(代理権目録)
- 身上配慮の責務
- 証書等の保管等
- 費用の負担
- 報酬
- 報告
- 契約の解除
- 契約の終了
任意後見契約書は公正証書で作成する
任意後見契約書は公正証書で作成しなければならないことになっています。公正証書は公証役場にて公証人が作成するものです。
公証役場は、本人の意思に間違いがないかを確認し、それを書面にする場所です。
よって、法的判断や指導、アドバイスをする場所ではありませんので、公正証書案として事前に契約書を作成しておくことが肝要です。
任意後見人に委託する事項
いずれの形態の任意後見契約であっても、任意後見人に委託できる事項は、自己の生活、療養看護及び財産管理に関する事務であり、介護等の事実行為は委託できず、また、具体的な医療行為に対する同意権ないし決定権については委託できないと解されています。
任意後見契約は公正証書でする必要があり、任意後見契約が締結され、その公正証書が作成されたときは、公証人の嘱託に基づき、公証人、委任者及び受任者にかかる事項並びに代理権の範囲等の登記事項が登記されます。
委任契約と任意後見契約の代理権目録
委任契約、任意後見契約の代理の範囲を代理権目録にまとめて明確にします。目録に記載する項目例は以下のとおりです。
- 全ての財産の保存及び管理に関する事項
- 金融機関、証券会社及び保険会社との全ての取引に関する事項
- 居住用不動産の購入、賃貸借契約等の契約の締結又は解約等に関する一切の事項
- 家賃、年金その他の社会保険給付等定期的な収入の受領、家賃、公共料金等定期的な支出を要する費用の支払並びにこれらに関する諸手続等一切の事項
- 生活費の送金及び生活に必要な財産の取得、物品の購入その他の日常生活関連取引並びに定期的な収入の受領及び費用の支払に関する事項
- 医療契約、入院契約、介護契約その他の福祉サービス利用契約、福祉関係施設入退所契約に関する事項
- 登記の申請、供託の申請、住民票、戸籍謄抄本、登記事項証明書の請求、税金の申告・納付等行政機関に対する一切の申請、請求、申告、支払等
- 要介護認定の申請及び認定に対する承認又は審査請求に関する事項
- 遺産分割の協議、遺留分減殺請求、相続放棄、限定承認に関する事項
- 訴訟行為に関する事項
- 以上の各事項に関連する一切の事項
委任契約と任意後見契約の関係性
委任契約に基づく任意代理から任意後見契約に基づく任意後見への移行に関する定めです。本人の判断能力が低下して任意後見契約が効力を生じても、当然に(何もせずとも)委任契約が終了するものではありません。
その場合に委任契約を存続させておくことに意味はありませんので、移行型の場合は任意後見契約の発効を委任契約の終了事由とする旨の定めを設けておくのが一般的です。
今回の記事はここまでです。
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