別居と離婚の密接な関係

別居と離婚は密接な関係があります。ここでいう「別居」は離婚前提の別居です。単身赴任や冷却期間の別居は含みません。また、「家庭内別居」は証明することが困難な場合もあり、ここには含めません。

離婚には、協議離婚・調停離婚・裁判離婚の方法がありますが、協議離婚のみが裁判所の手続きを利用しない離婚の方法です。裁判離婚では、離婚する理由が必要です。これを法定離婚事由といい、以下のように定められています。

法定離婚事由の例

  1. 不貞行為
    配偶者以外の異性と性的関係をもつことです。夫婦には貞操義務があり、これに反する行為ということができます
  2. 悪意の遺棄
    民法上の夫婦は同居してお互いに協力し、扶助し合わなければならないとする義務に反するということです。自ら家出したり、相手を虐待したり、追い出したりすること。経済的に生活費を渡さないことも該当します
  3. 3年以上の生死不明
    相手方が3年以上、生死不明の状態が続くことで、単なる行方不明ではありません。なお、1年続くと上記の悪意の遺棄になるので、3年以上の生死不明は珍しいといえるかもしれません
  4. 強度の精神疾患
    統合失調症等が該当します。離婚後の療養等についても取り決めがしっかりとなされていなければ認められないことが多いです。強度の精神病+回復の見込みがない状態が該当し、身体障碍は通常は適用されません
  5. その他婚姻を継続し難い理由
    その他なのでとても幅広い理由が該当します。性格の不一致、性交拒否、DV、親族との不和など具体的な事例に基づき判断されます。

別居は夫婦関係破綻

法定離婚事由の「その他婚姻を継続し難い理由」には夫婦関係破綻が含まれます。夫婦関係破綻とは、離婚届を出していなければ戸籍上は夫婦ですが、実質的な夫婦の関係は破綻していることをいいます。

夫婦関係破綻は別居によって証明されるため、別居と離婚は密接な関係にあるといえます。言い換えれば、別居をすればこれを原因として離婚が認められることになるからです。

明確な離婚事由がない場合や、不倫など表沙汰にできない理由の場合に、別居をして年数を稼いで離婚をする計画のケースもあります。

離婚に必要な別居期間

では、離婚に必要な別居期間はどれぐらいでしょうか。一般的には3年~5年とされています。3年~5年の別居で必ず離婚が認められるというわけではなく、総合的に判断されます。反対にいえば、3年未満の別居期間では認められないことが一般的ということです。

また、単に別居年数のみを考慮されるのではなく、婚姻期間と比較しての別居期間、未成熟子の有無、婚姻費用分担の支払状況などをみられることもあります。別居期間に他の離婚事由が発生することもあり、この場合は離婚事由も併せて判断されることになるでしょう。

有責配偶者からの離婚請求

有責配偶者とは、夫婦のうち離婚の原因をつくった方の配偶者をいいます。では、有責配偶者から離婚を切り出し、別居をした場合も3年~5年で離婚が認められるのでしょうか。

例えば、不貞行為をした配偶者側からの離婚請求で別居をするケースを考えてみると、あまりにも身勝手であり、相手側配偶者はたまったものではありません。

原則として有責配偶者からの離婚請求は認められません。ただし、原則があるということは例外もあるということです。

有責配偶者からの離婚請求を絶対的に認めないとすると、50年間別居をしたところで夫婦のままということになります。完全に夫婦関係が破綻しているのであれば、要件を満たせば有責配偶者からの離婚をみとめようとする考え方です。(破綻主義)

この場合、別居年数は5年~10年など2倍ほど必要とされることが多いようです。もっとも、有責配偶者からの離婚請求が認められるのは別居年数だけではなく、未成熟子の有無や婚姻期間との比較、経済的に困窮に陥る可能性などが判断材料となります。

別居中に協議離婚で離婚する

別居は、単に夫婦が異なる場所に居住することだけではありません。別居は夫婦関係の破綻を示す最たるものであるといえますが、別居によって夫婦には「権利と義務」が発生することになります。

婚姻費用分担

別居をすると収入が多い方から少ない方へ婚姻費用分担の支払をする義務が発生します。似て非なるものである養育費は、離婚後に未成熟子のために支払うものですが、婚姻費用分担は配偶者+未成熟子への支払いです。

養育費の場合は「18歳まで」や「大学をストレート卒業する月まで」の支払いですが、婚姻費用分担は「離婚成立まで」もしくは「同居回復まで」の支払いです。さらにいえば、支払う金額も養育費よりも高額です。

協議離婚なら別居年数は無関係

このようなことを考慮すると別居中に協議離婚で離婚をすることも大いに考えられます。別居年数うんぬんは裁判離婚の場合であり、協議離婚は別居年数は無関係だからです。

このような状況で協議離婚になると、離婚を切り出した方がかなりの譲歩をして取り決め事項を確定させることが多くなります。

財産分与の基準点に注意

もう一つ、別居をして離婚する場合に注意すべき点があります。離婚に伴って財産分与をすることになりますが、その基準点は離婚成立時ではなく別居日となることです。

別居してから得た所得は財産分与の対象外となります。また、管理している財産を別居後に費消したり隠匿したりしても無駄ということになります。

別居する際は、できれば別居に関する合意書を作成することを推奨します。合意書にはもちろん婚姻費用分担についても記載します。合意書を作成できない場合でも、住民票を移すなど、別居日を証明できるようにしておくことも重要なポイントです。

今回の記事はここまでです。

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