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離婚慰謝料とは
離婚慰謝料とは、離婚に伴って精神的に苦痛を与えられた側から与えた側への不法行為に基づく損害賠償金です。そして、その慰謝料は離婚原因を作った方(有責配偶者)が支払うことになるものです。
離婚する場合に、必ず夫から妻へと支払われるものが慰謝料だと思っている方は少なくありません。離婚=慰謝料だということはありません。むしろ慰謝料が発生しないケースの方が多いのです。
離婚の理由で多いものに、性格の不一致があります。この場合、どちらに原因があるか、またどちらにも原因があるということになりお互いに慰謝料を請求できないのが一般的です。
離婚慰謝料が発生する離婚原因
離婚慰謝料が発生する離婚事由のなかで代表的な事案は、不貞行為とDVです。不貞行為は夫婦間の貞操義務に反したことによるもの、DVは暴力です。これらは不法行為に基づく損害賠償請求ができる事案なので離婚慰謝料を請求することが認められます。
しかしながら、離婚訴訟で慰謝料を争う場合は被害を被ったことを証明する必要があります。不貞行為もDVも証拠が必要だということです。
裁判所が関与しない協議離婚、つまり夫婦で協議して離婚届を提出してする離婚の場合は夫婦で合意できれば、訴訟のような立証責任も不要です。
離婚慰謝料の時効
協議離婚の場合で離婚慰謝料が発生する場合は、離婚協議書に慰謝料の条項を記載します。金額だけではなく、支払い方法などもきちんと記載しなければならず、特に分割払いの場合は注意すべき点がありますので専門家に依頼されることを推奨します。
離婚慰謝料は離婚前と離婚後のどちらでも請求することが可能です。離婚慰謝料の請求は、不法行為に基づく損害賠償請求なので3年で消滅時効にかかります。(除斥期間は20年)3年以内に離婚慰謝料を請求する必要がありますが、早めに動くことが重要です。
しかし、離婚後に慰謝料を請求することは推奨できません。離婚後に慰謝料請求をしても実際には支払いしてもらえないどころか無視されることが予想されます。その場合は裁判所の手続きを利用せざるを得ないことになります。
離婚慰謝料を支払わせたとしても、訴訟代理人を委任した弁護士に支払う報酬は自腹です。差し引きするとヘタをすれば赤字になる恐れすらあります。
離婚慰謝料の相場は「ない」
離婚慰謝料に相場というものはありません。実務としては、裁判上で決定した慰謝料は100万円~300万円が多いようです。芸能人やプロスポーツ選手は何千万、何億の慰謝料と報道されることもありますが、そのほとんどは財産分与を含めた金額ですので離婚慰謝料自体は、さほど高額でもなく、資産が多いために財産分与の金額が多額となったためでしょう。
裁判では、離婚原因の内容、婚姻期間の長さ、資力や収入状況など個別具体的な事情によって決定します。以下は裁判所手続きで離婚慰謝料が決まる際の要因です。
・財産分与の金額。財産分与が大きい場合は逆に慰謝料が低くなる傾向がある
・有責度合い。請求した側にも有責性があれば減額される
・経済状況。資力が高ければ慰謝料も高くなる傾向がある
・精神的苦痛の度合い。
・職業や社会的地位
・離婚の経緯、婚姻期間、別居期間、年齢、子の有無など
・離婚後の扶助的な必要性
慰謝料に相場というものはありませんが、慰謝料請求を伴う裁判所の判例データから、傾向というものを窺い知ることは可能です。そして、協議離婚・示談・調停の場合と訴訟の場合では金額が異なることになります。
離婚慰謝料の請求方法
では、慰謝料を請求する場合はどのようにすればよいのでしょうか?最も多い不貞行為の場合について記述します。また、単純に慰謝料だけを請求するケースは少ないと思われます。配偶者に対しての請求なのか、不貞行為の相手方に対しての請求なのか、また、離婚と同時に請求するのか、慰謝料だけを請求するのかによっても異なります。
(1) 離婚する場合の慰謝料請求
不貞行為の発覚によって離婚することになり、同時に慰謝料請求をする場合です。
配偶者に対しての慰謝料請求
配偶者に対して離婚慰謝料を請求する場合は、離婚届出を提出する前に離婚に関する取り決めを書面にしなければなりません。これが離婚協議書です。離婚慰謝料についての条項を離婚協議書に記載して支払ってもらいます。
また、離婚協議書に記載する条項には離婚慰謝料のみならず、他にも重要なものがたくさんありますので金銭債権のみに目を奪われることのないように注意しましょう。
不貞行為の相手方に対しての慰謝料請求
不貞行為の相手方に対して慰謝料を請求する場合は、不法行為に基づく損害賠償請求です。知らないなどと言われないために、また、後日裁判手続きになった場合の「請求した証拠」として使えるように内容証明で請求することを推奨します。
不貞行為を原因として離婚した場合は、夫婦関係を継続する場合と比較すると慰謝料は高額になるケースがほとんどです。
(2) 離婚せずに夫婦関係を継続する場合
不貞行為が発覚したが、離婚はせずに夫婦関係を継続する場合です。
離婚しない場合の配偶者に対する慰謝料請求
配偶者に対しても不法行為に基づく損賠賠償請求をしますが、注意しなければならないのは、家計のお金から慰謝料を支払われても右手で投げて左手でキャッチするだけだという点です。
配偶者に慰謝料を支払ってもらうときは特有財産から出捐してもらうようにしなければなりません。しかしながら、特有財産が特にない場合も少なくありません。その場合は不貞行為の相手方に請求するのみになりますが、重要ポイントがいくつかあります。
このようなことから、配偶者に対しては高額な慰謝料は請求せずに不貞行為の誓約書を作成しておくこともできます。この誓約書には不貞行為の事実や謝罪、慰謝料、違約金条項を盛り込みます。
なお、誓約書に「次に不貞行為をしたら離婚する」といったような条項を入れる方がおられます。このことは「離婚の約束(予約)」ということになり無効になる可能性が高いため、おすすめできません。
離婚しない場合の不貞行為相手方に対する慰謝料請求
離婚はせずに、不貞行為の相手方に対して慰謝料を請求する場合は、単に慰謝料の支払いを求めるだけのものにはならないことがほとんどでしょう。何故なら配偶者との関係を断たせることが最も重要だからです。
不貞行為に対する謝罪、関係解消など慰謝料請求以外の条項も必要となるからです。一般的には不貞行為の示談書を作成し、その中で慰謝料も請求することになります。示談書の作成は注意事項がたくさんありますので、不貞行為の相手方に接触する前に専門家に相談されることを推奨します。
ネット上のテンプレートを使用することはとても危険です。重要なポイントに対応できているテンプレートは見たことがありません。(弁護士が「本当に使えるもの」を無料で公表するわけがありません)
行政書士は、慰謝料請求や書類の作成は受任できますが、相手方との交渉や、紛争が成熟した案件(裁判所の関与)である場合は弁護士法の定めにより受任できません
不貞行為は不真正連帯債務
不貞行為は共同不法行為です。一人ではできないことです。よって、不貞行為をした配偶者と相手方は、共同で不貞行為の責任を負います。
つまり、配偶者だけではなく、不貞行為の相手方も連帯して責任を負うことになるのです。不貞行為は不真正連帯債務といわれるものですが、民法上の連帯債務は適用されません。共同不法行為ですので、慰謝料の支払いも共同で行うことになります。
例えば、慰謝料100万円のケースで考えると、不貞行為の相手方から100万円を支払ってもらった後、配偶者にはもはや請求できなくなります。慰謝料は「2人で支払う金額」と考えるとわかりやすいと思います。
このことから、不貞行為の相手方に慰謝料を請求する場合、ココを抑えた条項として記載しなければとんでもないブーメランを食らうことにもなりかねません。
今回の記事はここまでです。
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