養育費算定表・婚姻費用算定表とは

養育費算定表・婚姻費用算定表とは、離婚の際に定める養育費や、別居の際に定める婚姻費用について、標準的な金額を算定することができる表です。

現在、裁判所で用いられている算定表は、平成30年度司法研究の研究員が研究結果を踏まえて作成したもので、改定標準算定表(令和元年版)といわれています。

この算定表を用いると、「子の人数」と「子の年齢」、「義務者(支払う人)の年収」と「権利者(受け取る人)の年収」により標準的な養育費を求めることができます。

養育費や婚姻費用は、権利者(受け取る人)からすれば、少なくとも「実際に支出する金額」を支払ってもらいたいと考え、多いに越したことはないと考えるはずです。反対に義務者(支払う人)からすると少ない方が助かると考えるでしょう。

このように権利者と義務者が養育費や婚姻費用を定めるときに、それぞれの主張がぶつかったり、金額を決めることが難しい場合、算定表は非常に有用です。

なお、養育費は離婚後に支払われるものですので、離婚協議書を作成するときに条項として記載します。婚姻費用については、離婚したわけではありませんので、別居をする際に別居に関する合意書を作成し、その中に条項として記載することを推奨します。

養育費・婚姻費用算定表の見方

では、実際に養育費・婚姻費用算定表の見方をご紹介します。算定表については裁判所ホームページで公開されています。「養育費・婚姻費用算定表」で検索すれば最上位に表示されるはずです。

算定表の種類を選択する

子の人数として「1人~3人」、子の年齢として「0歳~14歳、15歳以上」で区別されていますので、該当する表を選択します。婚姻費用算定表については子がいない場合、「夫婦のみ」という表があります。

義務者と権利者の年収でみる

算定表の種類を選択することができたら、縦軸が義務者(支払う人)、横軸が権利者(受け取る人)となっていますので、それぞれの年収のところ(最も近いところ)を縦と横に見ていき、交わるところが養育費の標準的な金額です。

金額については幅がもたせてありますので個別具体的な事情などにより協議して決めることができます。問題は、「年収」です。表には給与所得者と自営業者の2パターンが記載されていますが、年収についても記述しておきます。

養育費・婚姻費用算定表に用いる年収

給与所得者の年収

源泉徴収票の「支払金額」(控除される前)を年収とします。裁判所の手続きでは前年1年分の源泉徴収票を基礎としますので、協議するときも前年の年収で算定します。

転職をした場合で1年分に満たない場合は、直近3か月の給与から平均月収を算出して12を乗じ、賞与見込み額を足し合わせるのが一般的な方法です。

例えば、景気等により今年は減収になるからといっても考慮されることはほぼありません。あくまでも前年の年収が基礎となります。

複数の職場で働いている場合については、確定申告書や市町村の課税証明も準備しておくと円滑に協議ができると思います。

なお、養育費や婚姻費用の支払を免れるために、無職状態になったとしても、経済センサス平均賃金を収入と認定されたり、退職前の収入と同程度の潜在的稼働能力があると認定されることもあります。

自営業者の年収

自営業者の場合、確定申告書の「課税される所得金額」欄の金額が年収ですが、実際には支出されていない以下の費用をこれに加算することが一般的です。

  • 基礎控除、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除
  • 寡婦・寡夫控除、勤労学生・障害者控除、雑損控除
  • 青色申告特別控除、現実に支払いがない専従者給与控除
  • 医療費控除、生命保険料控除
  • 地震保険料控除、寄付金控除
  • 小規模企業共済等掛金控除

年収認定の留意点

  • 児童手当、児童扶養手当ともに年収には含めません
  • 高校授業料無償化は影響されず、算定表に基づきます
  • 算定表を超える年収の場合、算定表上限で算定することが多いです

子一人あたりの養育費

先述したように子の人数により用いる算定表が異なりますので、子が複数の場合は、すべての子に対しての養育費・婚姻費用の金額が導き出されます。

養育費の場合、上の子が未成熟子ではなくなった場合には下の子に対してのみに支払われるため、離婚協議書に養育費の記載をする場合は子一人あたりの養育費の金額を記載します。

単純に人数で除した金額でもいいのですが、15歳を境にして養育費算定の指数が変わるため、事前に子一人あたりの養育費額を知る必要があるケースも想定されます。

子の指数は、親を100とした場合の子に充てられるべき割合で、0歳~14歳は「62」、15歳以上は「85」と定められていますので、子一人あたりの養育費額を算出する場合は按分計算をします。

例えば、子が2人で上の子が15歳、下の子が12歳、養育費の月額が60,000円の場合を考えてみると、上の子は「60,000円×85÷(85+62)」で35,000円です。下の子は「60,000円×62÷(62+85)」で25,000円です。

算定表で求める養育費・婚姻費用

算定表で求めることができる養育費・婚姻費用は標準的とされていますが、実際には少ないと感じる方が多いのではないでしょうか。

協議して養育費を決める場合は、算定表の金額は最低限として考えることが望ましいともいえます。協議が整わない場合は家庭裁判所へ申立てをし、調停や審判で決することになります。

そうなると、裁判所の決定(審判)で定められた養育費の金額ということになるので、それで双方が納得しなければなりません。そして、実務としてはやはり算定表を用いることが原則です。

 

今回の記事はここまでです。

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