相続に必須の書類

相続の必要書類のなかでも、必須の書類である戸籍謄本等を中心に記述します。

なぜ戸籍謄本等が必要なのかといいますと、「相続人を確定させるため」です。

相続人には順位があり、①子②直系尊属③兄弟姉妹の順で相続人になります。配偶者はどの組み合わせでも必ず相続人になります。

第1順位の子がいれば第2順位の直系尊属(父母、祖父母)や第3順位の兄弟姉妹は相続人ではありません。

つまり戸籍謄本等は子を探し、いなければいないことを証明しつつ直系尊属を探して、いなければいないことを証明しつつ兄弟姉妹を探すために必須なのです。

戸籍謄本とは

戸籍謄本

現在の戸籍の内容を証明するものです。謄本とは記載されているすべての人の証明です。抄本とは一部の人についての証明です。

謄本と抄本は違うものです。「戸籍抄本も可」といった記載がない場合は戸籍謄本を取得するのが一般的です。

呼び名が2通りあってややこしいのですが、戸籍謄本は電子化されていない戸籍で、電子化された戸籍は全部事項証明書といいます。

戸籍抄本も同じように、電子化されたものは個人事項証明書といいます。しかしながら何年も前からずっと戸籍謄本と言ってきたため、そのまま現在でも戸籍謄本という場合が多いです。

とくに使い分けなくても支障はありません。

除籍謄本

戸籍に記載されている人すべてが、転籍(戸籍の所在地である本籍を移転)や婚姻、死亡などの理由で除籍になり、結果、戸籍が空っぽになったことを証明するものです。

改製原戸籍謄本

戸籍を様式変更や電子化のために改製(作り替えること)する前の、元の戸籍に記載されている内容の証明です。

改製原戸籍は、現戸籍=最新の戸籍と音(ゲンコセキ)によって勘違いすることを避けるために「はらこせき」「はらこ」とも言われています。

戸籍の附票

住所の移転を記録した書類です。本籍地で戸籍と共に管理されています。附票には、本籍や筆頭者のほか、その戸籍にいる人の住所の異動が記録されています。

戸籍の広域交付制度

令和6年3月1日から、全国の市区町村窓口で、本籍地外の戸籍謄本や除籍謄本を申請できるようになっています。

取得できるのは戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本です。相続手続きの必要書類収集が円滑にできるようになりました。

広域交付制度を利用した書類取得は、戸籍に記載されている人、戸籍に記載されている人の配偶者、戸籍に記載されている人の直系尊属・直系卑属です。

兄弟姉妹やおじ・おば、甥・姪は直系ではないので請求できません。また、委任状による任意代理人や法定代理人は請求できないので注意が必要です。

被相続人についての必要書類

ここでは最も多いパターンである「配偶者と子」「子のみ」が相続人であるケースを例にして、必要な戸籍謄本等を挙げます。

相続人が直系尊属や兄弟姉妹の場合は確認事項と証明事項が異なるため必要となる戸籍謄本等も変わってきます。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本

被相続人の本籍がある市役所で市役所窓口で「相続手続きに使うので、出生から死亡までの連続した戸籍をください」と言って取得します。

ここでは、被相続人の子すべてを確認するために取得します。子は生存している人だけではなく、被相続人よりも先に死亡した子、養子、認知した子も含めます。

代襲相続人がいる場合は追加で必要

すでに死亡した人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本を取得します。

これは、この人に子がいる場合は、その子が代襲相続人となるので代襲の有無を確認するためです。

代襲相続人がいる場合は、その人の戸籍謄本を取得して生存していることを確認します。

被相続人の住民票の除票(本籍地記載)

被相続人の最後の住所地の市役所で取得します。これは、被相続人が亡くなった場所(住所)を調べるために取得します。

亡くなった場所がどうして重要なのかといえば、相続開始の場所として確定するからです。また、後の手続きに使用する相続関係説明図に最後の住所として記載します。

住民票除票は廃棄済みで出てこない場合もあります。この場合は戸籍の附票を取得しなければなりません。戸籍の附票は戸籍謄本同様に本籍地の市役所で取得します。

相続人についての必要書類

被相続人についての戸籍謄本等で相続人が確定できたら、その各相続人についての必要書類を収集します。

相続人の戸籍謄本(抄本)

被相続人が死亡した10日後以降に戸籍謄本を取得します。

相続人が生存していることを確認します。また、被相続人の子であることを確認しておきます。

相続人全員の住民票の写し(本籍地記載)

法定相続情報一覧図を作成する際に、相続人それぞれに住所を記載する場合に必要です。戸籍謄本等の束を利用するよりも法定相続情報一覧図1枚にして利用することを推奨します。

法定相続情報一覧図を作成する場合には、申出人(相続人の代表者)の「運転免許証表裏コピー、マイナンバーカード表コピー、住民票の写し」のいずれかも必要です。

相続人全員の印鑑登録証明書

未成年者以外は印鑑登録証明書も各種手続きに必要です。遺産分割協議書など、作成する書面には実印を押印しなければならず、その印の証明として印鑑登録証明書が必要になります。

印鑑登録証明書も使用期限はありませんが、金融機関の手続きに使用する場合については3か月以内のものが必要となる場合がありますので注意が必要です。

遺産についての必要書類・必要資料

遺産に不動産(土地・建物)がある場合

固定資産評価証明書または固定資産納税通知書(評価額が記載された最新年度のもの)が必要です。遺産としての価額を決定するために必要です。

相続登記にも必要となります。また、名寄せ帳も取得することをおすすめします。相続人も知らなかった被相続人が所有していた土地や建物が存在する場合もあるからです。

自動車について

被相続人名義の自動車については名義変更や抹消登録が必要となるため、また、遺産として価格決定をしなければならないため車検証が必要です。

なお、相続に関する自動車の名義変更は通常の名義変更(移転登録)とは必要書類が異なります。

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