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令和6年民法改正 離婚後の子の利益を確保する法律
令和6年(2024年)5月24日に、夫婦が離婚した後の子の利益を確保することを目的とした改正法が交付されました。この法律は、令和8年(2026年)5月24日までに施行されます。
この法改正では、子を養育する親の責務を明確化するとともに、親権・養育費・親子交流(面会交流)・財産分与などに関する法律の規定を大幅に見直しています。
親の責務に関する法改正
父母は親権や婚姻関係の有無にかかわらず、子の心身の健全な発達を図るため、子を養育する責務を負います。その際には、子の意見に耳を傾け、その意見を適切な形で尊重することを含め、子の人格を尊重しなければなりません。
この場合の扶養の程度とは、子が親と同程度の水準の生活を維持することができるようなもの(生活保持義務)でなければなりません。親権は、子の利益のために行使しなければならないのです。
親権に関する法改正
親権とは、親が未成年の子(未成熟子)を養育・監護し、子の財産を管理する権利です。また、これは権利であるとともに義務でもあります。父母が婚姻している間は、父母双方が親権者です。
親権は以下の2つから成り立っており、共同親権の導入によって権利のバランスや内容が変わってくる可能性もあります。裁判所の判例が蓄積されていない現状では不透明な部分があります。
- 身上監護権
単に「監護権」ともいいます。子と暮らして身の回りの世話等をします - 財産管理権
子の財産を管理し、法定代理人として子に代わり契約行為等をします
従来の民法では、離婚後は父母の一方のみを親権者と定めなければなりませんでした。今回の改正により、離婚後は、共同親権の定めをすることも、単独親権の定めをすることもできるようになります。必ず共同親権になるということではなく選択肢ができたということになります。
親権者の定め方
協議離婚の場合は、父母が離婚協議により、共同親権か単独親権かを定めることになります。協議離婚が整わない場合(離婚協議ができない場合も含む)、調停や訴訟において家庭裁判所が、父母と子との関係や、父と母との関係などの様々な事情を考慮した上で、子の利益の観点から共同親権か単独親権かを定めます。
裁判の場合、家庭裁判所は父母それぞれから意見を聴かなければならず、子の意思を把握するよう努めなければなりません。次のような場合には、家庭裁判所は必ず単独親権の定めをすることとされています。
- 虐待のおそれがあると認められるとき
- DVのおそれその他の事情により父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき
共同親権は諸外国では当然のところもあります。日本では、何年も前から議論されてきましたが、ついに法改正となりました。子の福祉を最優先して夫婦間で合意に至ることが重要となります。
共同親権に関する法改正
共同親権の行使方法のルールが明確化されています。
- 親権は父母が共同して行うが、父母の一方が親権を行うことができないとは、他方が行う
- 親権の単独行使ができるのは、「監護教育に関する日常の行為」をするとき、「子の利益のため急迫の事情」があるとき
- 特定の事項について、家庭裁判所の手続きで親権行使者を定めることができる
監護教育に関する日常の行為とは
日々の生活の中で生じる監護教育に関する行為で、子に重大な影響を与えないものをいいます。個別具体的な事情によりますが、次のような場合が想定されています。
日常の行為に当たる例(単独行使可)
食事や服装、髪型の決定、短期間の観光目的での旅行、心身に重大な影響を与えない程度の医療行為の決定、ワクチン接種、塾や習い事、高校生の放課後のバイト許可 など
日常の行為に当たらない例(共同行使)
子の転居、進路に影響する進学先(就職先)の決定、心身に重大な影響を与える医療行為の決定、財産の管理(預金口座の開設)など
子の利益のため急迫の事情があるとき
父母の協議や家庭裁判所の手続きをしていては親権の行使が間に合わず、子の利益を害するおそれがある場合です。急迫の事情があるときは、日常の行為にあたらないものについても、父母の一方が単独で親権を行うことができます。例えば、急迫の事情の例としては次のような場合があります。
- DVや虐待からの避難(子の転居などを含む)をする必要がある場合
- 子に緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
- 入学手続きの期限が迫っているような場合
共同親権のメリット
共同親権にするメリットは以下のことが考えられます。これらも実際に判例がある程度でなければ判断が難しいこともあります。
- 親権争いの解決方法になる
従来は親権者はひとりしかなれないために離婚の際に親権争いが発生し、長い期間の調停や裁判になることがありましたが、共同親権という選択肢ができたことで、これを避けることができる可能性が高まります - 親子交流(面会交流)が促進される
共同親権なら、非監護親も親権者なので親子交流がしやすくなる可能性が高まります。また、今回の法改正により親子交流に関しても改正され、祖父母等に親子交流が認められるなどのメリットがあります - 養育費の未払いを防げる
非監護親も親権者になるため養育費の支払いをきちんと履行してもらえる可能性が高まります。また、今回の法改正により養育費に関しても改正され、法定養育費や先取特権など新たな制度が始まります
子の監護についての定め
父母が離婚するときは、子の監護の分担についての定めをすることができます。この定めをするに当たっては、子の利益を最も優先して考慮しなければなりません。
離婚後に共同親権とした場合であっても、その一方を監護者と定めることができます。定められた監護者は、日常の行為に限らず、子の監護教育や居所・職業の決定を、単独ですることができます。
監護者でない親権者は、監護者が子の監護等をすることを妨害してはなりませんが、監護者による監護等を妨害しない範囲であれば、親子交流の機会などに、子の監護をすることができます。
この監護者についての定めをみる限り、共同親権とはいうものの、監護者が従来の親権者としての権利を持ち、非監護親の親権者としての権利は制限されているように考えられます。
親権者の変更
離婚後の親権者については、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所が、子自身やその親族の請求により、親権者の変更をすることができます。
この変更は、従来の「父から母へ、母から父へ」といった変更だけではなく、「共同から単独へ、単独から共同へ」も含むことになります。
離婚前の父母間に一方からの暴力等があり、対等な立場での合意形成が困難であったといったケースでは、子にとって不利益となるおそれがあるため、この手続きによって親権者の定めを是正することができます。
親権に関する留意事項
すでに単独親権として離婚している場合、今回の改正法施行によって自動的に共同親権に変更されるようなことはありません。しかし、改正法施行後に家庭裁判所が申立てに基づいて、子の利益のための必要性を踏まえて、親権者を単独親権から共同親権に変更する場合があります。
どのような場合に共同親権への変更が認められるかは状況によりますが、例えば養育費の支払を長期間にわたって怠っていたような場合には、共同親権への変更が認められにくいと考えられます。
また、虐待やDVのおそれがあるときや、共同親権が困難であると認められるときは、共同親権への変更はされません。
なお、今回の改正により、父が認知をした子についても、父母の協議により、共同親権とすることができるようになります。父母の協議が調わないときは、家庭裁判所が、父母と子との関係や、父と母との関係などの様々な事情を考慮した上で、子の利益の観点から、共同親権とするか、単独親権とするかを定めます。
今回の記事はここまでです。
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