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有責配偶者とは
有責配偶者とは、夫婦関係・婚姻関係を破綻させて離婚の原因を作り出した配偶者のことです。原因としては不貞行為、DV、悪意の遺棄などですが、当記事では不貞行為を想定して記述します。
協議離婚の場合は夫婦間の合意により離婚が可能なため、慰謝料は発生するものの離婚が認められないという問題には至りません。
問題なのは、離婚調停をしても離婚の合意に至らない場合に、離婚訴訟の提起があったときです。少なくとも有責配偶者の側は、自分自身が有責配偶者であることをわかっていると思われます。しかし、後述するように有責配偶者からの離婚請求は原則認められません。
そこで有責配偶者は(代理人弁護士は)、裁判所から有責配偶者との認定評価をされないように様々な策を講じることでしょう。つまり有責配偶者かどうかは裁判のなかで明らかになるのです。
有責配偶者からの離婚請求は認められない
では、離婚訴訟において有責配偶者からの離婚請求は認められるかというと、原則として認められません。不貞行為をした配偶者から離婚を請求することは、あまりにも身勝手で信義則(信義誠実の原則)に反する行為だからです。
最高裁判所も、夫婦関係が完全に破綻している場合でも、信義則に反するからとして離婚請求を認めていませんでした。しかし、離婚請求する人が有責配偶者だという理由だけで離婚を認めないことは戸籍上だけの夫婦の形を強制することにもなるので、昭和62年には「信義則違反ではない」場合には離婚請求を認めるようになりました。
有責配偶者からの離婚請求を認める条件
信義則違反ではないと評価する基準は以下のとおりです。これらを個別具体的に判断されるので、あくまでも基準を満たしていると判断するのは裁判所です。(ここ重要です)
相当長期期間の別居が認められる
別居期間は長ければいいとはされていません。例えば別居が10年に及んでいたとしても、婚姻から別居までが20年で円満な夫婦生活だった場合は、同居期間と比較すると別居期間は半分しかありません。よって、相当長期期間とは一概に何年以上の別居ということではありませんでした。
しかし平成5年から7年ころ、「別居期間が5年以上」を法定離婚事由として条文に記載しようとする法改正の動きがありました。法制審議会ではまとまりましたが、未だ法改正には至っていません。
結局のところ法定離婚事由は以下のとおりのままです。そもそも離婚訴訟においては、法定離婚事由がなければ離婚請求が認められません。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病で回復の見込みがない ※令和6年5月改正で削除
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
法改正には至りませんでしたが、戸籍上の夫婦の形にこだわって、現実に婚姻破綻している夫婦の現状を無視することはできない、破綻している現実を重視しようとする動きがあり(破綻主義)ます。
結果、離婚が認められる別居年数は以前よりもはるかに短くなっている事実があります。公にはしていませんが、法制審議会の結果を受けてか5年がひとつの基準と考えられている可能性があります。
未成熟子がいないこと
未成熟子とは、単に未成年の子ということではありません。親から独立して社会的・経済的に自立していない子を未成熟子として考えます。
未成熟子がいる場合は、子の福祉を最優先して考慮しなければならないとの考え方から、このような条件が設定されているものと思われます。
いわゆる過酷条件
過酷条件とは、「離婚した後の、有責配偶者ではない配偶者の側(無責配偶者)が離婚する前よりも精神的、社会的、経済的に極めて厳しい状態に置かれる等の社会的な正義に著しく反する結果が生じないこと」です。
別居期間が長期であれば、その間の無責配偶者の生活水準を参考にできることから、離婚による財産分与や慰謝料の支払いを有責配偶者が拒否したり資力に問題があるといった理由が無ければ比較的認められやすい条件といえます。
有責配偶者からの離婚請求による裁判
有責配偶者からの離婚請求があり、離婚訴訟が始まった場合、原告と被告から様々な資料(証拠)や主張と抗弁がなされます。
恐らくは弁護士が代理人となるケースが多いため、有責であることを認めるか否か、無責配偶者は離婚自体には合意できるか、離婚に合意する条件についてなどがポイントになります。
以前には有責配偶者からの離婚請求は認められていませんでしたが、現在では全く認めないとするスタンスではなくハードルも下がっているため、認められる可能性はあります。
離婚訴訟が始まると、原告と被告が様々な資料(証拠)を準備して主張や抗弁を繰り返します。離婚訴訟の途中で和解(裁判上の和解)による決着も十分に考えられます。
離婚訴訟には確固たる覚悟が必要ですが、離婚問題に精通した弁護士に相談されることを推奨します。なお、離婚訴訟はまずは離婚調停を経由しなければなりません(調停前置主義)。この離婚調停のなかに離婚訴訟を戦う上での大きなヒントがあるので些細なことでもメモをしておくことが肝要だといえます。
今回の記事はここまでです。
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