離婚に伴う財産分与に自動車があるとき

自動車も財産分与として分与すべきものです。車のことだと思い車屋さんに聞く方がおられますが、車屋さんに正しい離婚の知識はありませんので、まずは正しい知識が必須です。

離婚する際には財産分与の取り決めをします。財産分与とは「婚姻中に夫婦で築いた財産を離婚に伴って分け合う」ことです。

ほとんどの場合で財産分与の分与割合は2分の1です。財産分与は共有財産のみが対象ですので、特有財産は対象外となります。

  • 共有財産:婚姻中に夫婦で築いた財産で現預金、不動産、自動車、貴金属などすべての財産です。また、夫と妻のどちらに属するのかわからない財産については共有財産となります。自動車の場合は「名義」がありますが、夫婦どちらの名義かに関わらず共有財産になります。
  • 特有財産:婚姻前から所有している財産や親族からの譲渡・相続で取得した財産、婚姻前の所持金で購入した財産です。婚姻前から所有している自動車は特有財産です。

財産分与は離婚後に分与しますが、離婚届を提出する前に、自動車の分与も記載した離婚協議書を作成しておきましょう。

離婚協議書は非常に重要な書類ですが、ネット検索したぐらいでは正しい知識は得られません。法律・判例・学説の知識が必須ですので当事務所のような離婚に精通した行政書士や弁護士(高額ですが…)に作成を依頼されることを強く推奨します。

当事務所は離婚相談・離婚協議書の作成、車の名義変更のどちらもお任せいただけます。

自動車の財産分与の方法

離婚調停や離婚訴訟のように裁判所が関与する離婚方法ではなく、協議離婚の場合は夫婦双方の合意があればOKです。

実務としては、夫婦それぞれがそれぞれの名義で自動車を所有している場合は、離婚後もそのままにすることが多いです。この場合には、移転登録・名義変更は不要ですが、住所や氏名に変更があれば変更登録が必要となります。

保管場所が変更になる車は車庫証明を取得してから変更登録です。

それぞれの名義人がその車を取得するのではない場合、売却してその売却益を2分の1で分与するケースや、一方が車を取得する場合に代償金として現在の価額の2分の1をもう一方に支払うケースがあります。

普通車(登録車)の移転登録や軽自動車の名義変更は15日以内にしなければならないので、分与を受けたらそんなに時間はありません。

また、自動車税は毎年4月1日時点の所有者に課税されますでの、離婚に伴う自動車の財産分与がこのタイミングの場合は更に注意が必要となります。

ローン中の自動車の場合

自動車がローン中の場合は、現在の価値に対してローン残債がどうなのかを確認しなければなりません。そのため、買取店やディーラーなどで自動車の査定をしてもらう必要があります。

複数の査定を取って平均する方法もあります。そして、もし売却したとしたらローンが残るのか、ローンを完済できて利益が生まれるのかを確認するのです。

このいずれかにより財産分与の扱いが異なりますので見て参りましょう。

プラスになる場合(アンダーローン)

①売却して売却益を2分の1で分与する方法、②売却はせずに乗る方が乗らない方へ売却益相当金の2分の1の金額を代償金として分与する方法のいずれかになると思います。

マイナスになる場合(オーバーローン)

①売却して残債を夫婦で負担する方法、②乗る方がローン負担する方法のいずれかになると思います。

実務上、協議離婚なので夫婦の合意があればOKですから、マイナスになる場合は財産分与の対象外とし、乗っていた方がそのまま乗ってローン負担するケースが多いように思います。

所有者が販売店やローン会社の場合

車検証の所有者が販売店やローン会社で、使用者が夫婦のいずれかのケースでは注意が必要です。

通常であれば、この場合はローン完済後に「所有権解除」という手続きをして車検証の所有者を使用者(夫婦のいずれか)に変更するものです。

ローン中の売買や名義変更は必ず事前に所有者に相談の上で指示に従う必要があります。契約に特約が付いていて残金一括返済を迫られる恐れがありますし、何より所有者から必要書類をもらわなければ手続きが出来ないからです。

ローン中ということは、所有権はローン会社がもっていることになります。車は所有者と使用者に名義が分かれています。車検証をみれば一目瞭然です。

ローン中は所有者の変更はできませんので、使用者を変更することになります。

名義変更の方法

普通車の場合は「移転登録」

移転登録とは管轄の運輸支局で行う名義変更の手続きで、手続き後に所有者変更をした新しい車検証を受け取ります。

必要書類は以下のとおりですが、状況によってはこれら以外にも書類が必要となるケースもあります。

  • 車検証の原本
    車検の有効期間が残っている車検証原本
  • 自動車検査証変更記録申請書
    OCR第1号様式です
  • 旧所有者の委任状(代理手続きの場合)
    実印を押印します
  • 新所有者の委任状(代理手続きの場合)
    実印を押印します
  • 譲渡証明書
    譲渡人の実印を押印します
  • 旧所有者の印鑑登録証明書
    3か月以内のもの
  • 新所有者の印鑑登録証明書
    3か月以内のもの
  • 自動車保管場所証明書
    車庫証明書です。新使用者が予め取得します
  • 手数料納付書
    移転登録は500円分の印紙を窓口で購入して添付します
  • 税申告書
    様式は窓口にあります
  • 旧ナンバープレート
    管轄が変更になる場合。新ナンバープレートには封印が必要ですので、ご自身で手続きをされる場合は車を運輸支局に持ち込む必要があります。

以上が一般的な必要書類ですが、注意事項がありますのでご紹介しておきます。

  1. 実印と印鑑登録証明書
    妻が実印登録していない場合や、離婚後に旧姓復氏する場合には事前に実印登録をしておく必要があります。また、夫も含めて住所の変更がある場合も速やかに変更をしなければなりません。移転登録は15日以内ですので、印鑑登録と後述の車庫証明申請を急いでしなければなりません。
  2. 自動車保管場所証明書(車庫証明書)
    新旧使用者の使用の本拠の位置に変更がない場合は車庫証明書の添付は不要です。
  3. 旧所有者の氏名・住所に変更があるとき
    車検証に記載されている旧所有者の氏名又は住所に変更があるときは、印鑑登録証明書の記載と異なることになります。氏名に変更があるときは氏名の変更がわかる戸籍謄本(抄本)や住民票が必要です。住所に変更があるときは住所のつながりがわかる住民票が必要です。

軽自動車の場合は「名義変更」

軽自動車の場合は軽自動車検査協会で名義変更の手続きをします。滋賀県の場合は滋賀運輸支局に隣接しています。

軽自動車の名義変更の必要書類は以下のとおりです。こちらも状況によってはこれら以外にも書類が必要となるケースもあります。

なお、軽自動車には車庫証明というもの自体がありません。お住まいの地域が対象となっている場合のみ保管場所届出(車庫届出)が必要です。

滋賀県の場合は彦根市、草津市、大津市(旧志賀町除く)が対象です。保管場所届出は名義変更に届出をします。

  • 車検証
    車検証は必ず原本を提出します
  • 自動車検査証変更記録申請書
    OCR 軽第1号様式
  • 申請依頼書
    新使用者以外の人が手続きする場合
  • 新使用者の住民票又は印鑑登録証明書
    3か月以内のものでコピー可。住民票はマイナンバーの記載がないもの
  • 税申告書
    様式は窓口にあります
  • 旧ナンバープレート
    管轄が変わる場合。軽自動車には封印制度はありませんので旧ナンバーを取り外して返却すればOKです。新ナンバーも付属のボルトで取り付ければOKです。
  • 手数料は無料

以上が一般的な必要書類ですが、注意事項がありますのでご紹介しておきます。

  • 旧所有者の氏名・住所に変更があるとき
    車検証に記載されている旧所有者の氏名又は住所に変更があるときは、住民票や印鑑登録証明書の記載と異なることになります。氏名に変更があるときは氏名の変更がわかる戸籍謄本(抄本)や住民票が必要です。住所に変更があるときは住所のつながりがわかる住民票が必要です。

離婚する前に名義変更をする場合

離婚前に名義変更をする場合については扱いが異なります。原則としては離婚後に手続きをしますが、離婚前に名義変更をすることもできます。

しかしながら、離婚後に引っ越し等で保管場所が変更になる場合や、旧姓復氏によって氏が変わる場合は、車庫証明申請や変更登録の手続きも必要です。

変更登録も運輸支局や軽自動車検査協会での手続きになりますので二度手間になってしまいます。このような理由から、離婚協議書に自動車の分与を記載をし、離婚後に手続きすることを推奨します。

名義変更せずに乗り続けると

時々、離婚協議書に自動車の財産分与を記載した上で離婚届を提出したにも関わらず、旧所有者が必要書類を送付してくれないことがあります。

この場合、旧所有者にとってはデメリットとリスクしかありません。まず、道路運送車両法により、15日以内に変更の手続きをしなければならないことになっています。これに違反すると50万円以下の罰金です。

さらに厳しいのが自動車損害賠償保障法で定められている運行供用者の責任です。運行供用者とは、「自己のために自動車を運行の用に供する者」をいいます。

例えば、元妻が元夫名義のまま乗っていた自動車で事故を起こしてしまい、被害者に甚大な損害を与えた場合を考えてみると、次のケースに該当しなければ所有者に責任が課せられます。

  1. 加害者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
  2. 被害者に故意または過失があったこと
  3. 自動車に構造上の欠陥や機能障害があったこと

保険のこともお忘れなく

夫名義の車、夫が保険に入っているケースで、離婚後に名義変更(移転登録)をせずにそのまま妻が乗っていることもあります。

忙しくて書類を取得できない、運輸支局に行く時間が無いなどの理由でしょう。しかし、もし妻が事故を起こすことを考えると恐ろしいことになります。

なぜなら、すでに夫婦ではないため、保険金が支払われない可能性が高いからです。

車の名義変更をしたら間髪入れずに保険の手続きをすることもお忘れなく。

自動車損害賠償保障法第3条(自動車損害賠償責任)
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
引用元:e-Govポータル

離婚相談・離婚協議書の作成を承ります

行政書士かわせ事務所公式ホームページの「離婚相談・離婚協議書のページ」もご覧下さい